「最小限であることは、豊かさと直結している」—— 代官山のギャラリーで、建築家・田根剛はそう切り出した。無駄を削ぎ落とした先に現れるのは、物質ではなく関係性だ。
表参道から裏手に入ると、白いコンクリートの小さなブックストアが現れる。壁面に打たれた大きな窓 — その向こうには、通路と本棚だけ。所有よりも体験を誘う空間だ。ミニマリズムはもはや「何もない」ではなく、「可能性だけがある」状態を指すようになった。
空白とは、次に何が起こるかを想像させる装置だ。—— グラフィックデザイナー・色部義昭
六本木で開催中の「エンプティ・フォーム」展は、彫刻とインスタレーションを通じてネガティブスペースを可視化する。出品者の一人、山田詩織は建築廃材を組み合わせ、そこにあえて「空洞」をつくる。「完成しないことの美しさ」がテーマだという。
かつての黒一色のレイヤードから、今はシルエットと布の落ち方に焦点が移っている。展示会場で会ったスタイリストは「ミニマルは静かな主張」と語る。目立つロゴを排し、縫製や布端の始末で勝負する——そんなブランドが、南青山に旗艦店を構え始めている。